むかし、宇留野の鎮守様が井戸の水にあたって大へん苦しんだことがありました。そのため、鎮守様は村人たちに、「井戸を掘ってはならない。守らないとその家は三代で滅びる。」と告げたのです。村人はこのお告げを固く守ったので、村内には井戸が一つもありません。村人の一人彦衛門(ひこえもん)という男がいました。「井戸を掘るなんて、そんな馬鹿なことはねえ。鎮守様にお願いして井戸を掘ろう。」ほかの村人たちに相談をもちかけたのですが、だれも相手にしません。彦衛門は鎮守様に、「わたしに井戸を掘らしてくだされ。」と祈ったのち、屋敷の中に井戸を掘りあげました。井戸を掘ってから一年間はなんのおとがめもありません。ところが、ようやく村人のうわさが消えはじめたころ、妻が奇病にとりつかれて死んでしまいました。それからというもの、彦衛門の家には不幸が重なりました。彦衛門も、「井戸を掘った神罰だ。悪かった。」と、深く後悔したのですが、どうしようもありません。そして子どもたちも若死にし、三代ももたなかったそうです。その後、村人たちはだれも神罰を恐れ、井戸を掘りません。この古井戸が、宇留野にはいまもあって、「ゴキ井戸」と呼んでこの伝説を伝えています。ゴキ井戸は「御器(ごき)井戸」で、ちゃわんなどを洗う浅い井戸のことだということです。
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