いまからおよそ千三百年ぐらい前、現在の中国が唐といったころの話です。三蔵法師という偉い坊さんが、唐からわが国へ仏教をひろめるためにおとずれ、この地を通りかかりました。三蔵法師は、土地の人びとが水がとぼしくて苦しんでいるのをみて、泉を掘って救ってくれました。その泉を「三蔵の滝」と呼んでいます。三蔵法師は正観音さまの像を刻み、その像と天竺(いまのインド)から持ってかた米と箸とを、いっしょにこの地へ埋めて立ち去りました。後の時代のこと、関東地方に大ききんがあって、人びとは食物がなくて困っていたときです。朝廷の命により、弘法大師が仏教を諸国にひろめるために歩いていました。そして、前小屋(いまの大宮町泉)まで来たとき、紫の煙が天にのぼっていくのを見ました。「あの煙は何だろうか」大師は大いに驚き、祈祷をしました。このことがあってから、気候もよくなり、その年は稲も麦も豊かに実り、人びとは苦しみから救われました。紫の煙の立ちのぼったのは、三蔵法師が正観音を埋めたところでした。弘法大師はそこに寺を建て、三蔵山種生院と名づけました。そして、しばらくこの寺にとどまり、仏教を教えました。人びとはこの寺を「泉の観音様」と呼び、弘法大師が去ったあとも、手厚くまつってきたということです。
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