第7話:朝日姫と鏡ヶ池

朝日姫と鏡ヶ池むかし、大里(いまの金砂郷町)に、たくさんの金銀や土地を持つ長者が住んでいました。人びとはこの長者を万石長者と呼んでいたのです。 そのころ奥州征伐に行く八幡太郎義家が、長者の屋敷に泊まりました。長者は大いに喜び、手厚くもてなし、ごちそうをいっぱい出しました。 義家は長者のあまりの富豪ぶりを目のあたりに見て驚きました。三日三晩にわたってもてなしを受けたのち、お礼を言って旅立ちましたが、途中から引き返してきました。 「このままにしておいては、あとあとためにならない。」 と考え、急に長者の屋敷を襲って、滅ぼしてしまったのです。 この長者にはひとりの美しい娘がいて、名を朝日姫といいました。万石長者が滅んだ時、乳母によって助けられ、いまの常陸大宮市下岩瀬にある春日神社近くに隠れ住んでいました。 朝日姫は十八歳の春を迎えたとき、父や母の霊をなぐさめるため、万石長者の家を再興しようと強く決意しました。そして、それが成就するように百か日の間祈願したのです。 その満願の日です。身を清めて白装束となった姫は、境内の池のほとりの松に、日ごろ大切にしていた八稜の鏡をかけ、お化粧をはじめました。池の水は清く、すがすがしい朝でした。ところが、ちょっとしたはずみで、池の中へ鏡を落としてしまったのです。あわててその鏡を拾おうとした姫は、足をすべらせて深みにはまり、おぼれてしまいました。 その後、女の亡霊が出て、長い間付近の人たちを悩ませました。村人は朝日姫の怨霊だといって恐れ、池に近寄る者もありません。「常福寺の坊さまに拝んでもらおうじゃねえか。」 村人たちは、いまの瓜連町にある常福寺の了誉上人という偉い坊さんにお祈りしてもらいました。 その後、姫の亡霊は出なくなりました。 そしてある日、一匹のカメが池の中から出てきたのです。不思議なことに、その背中には姫の落とした鏡がのっていました。 村人たちはその鏡を常福寺に納め、供養してもらいました。下岩瀬の人たちは、池や川でカメを捕らえると、必ずこの池に放し、姫の霊をなぐさめるようになりました。そして、この池を鏡ヶ池と呼ぶようになったということです。

 

問い合わせ先:常陸大宮市役所文化スポーツ課

TEL:0295-52-1111

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  • 【更新日】2019年5月7日
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