令和5年度施政方針
はじめに
令和5年第1回市議会定例会に提案いたします議案等の説明に先立ち、市政運営の基本方針と新年度における主要な施策の概要を申し上げます。
はじめに、新型コロナウイルス感染症につきましては、2020年3月11日のWHO(世界保健機関)による「パンデミック(世界的大流行)」宣言から間もなく3年となりますが、この間、長きにわたり最前線での対応に、御尽力をされている医療従事者をはじめ関係者の皆様に心から敬意を表するとともに、感染拡大防止に御協力をいただいている市民の皆様に、感謝を申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染症の蔓延が長期化する中、人々の交流・つながりも希薄にならざるを得ない状況が続いておりましたが、昨年を振り返りますとウィズコロナという考え方の下、感染防止対策を徹底しながら、全国的に恒例行事や各種イベントが再開されるなど、賑わいを取り戻しつつある1年となりました。本市におきましても、3年ぶりの開催となった「ふるさとまつりおおみや ふれあい広場」や「やまがた宿芋煮会」など、多くの人々が集まるお祭りや各種イベントを通じて、市民の皆様と喜びと感動を共有することができました。今年もこうしたお祭りやイベント等が開催され、市民の皆様をはじめ、市外からもたくさんの方々にお越しいだだき、交流人口或いは関係人口の拡大へ繋がることに大いに期待しているところであります。
そのような中、我が国の経済に目を向けますと、景気の先行きにつきましては、ウィズコロナの下に展開される各種政策の効果により、景気が持ち直していくことが期待されているものの、長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、昨年2月に始まったロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を背景としたエネルギーや食料をはじめとする物価高騰など、世界情勢は不安定さを増し、日本経済も依然として厳しい状況にあります。
一方、コロナ感染症対策におきましては、感染者数をはじめ、致死率や重症化するケースの減少などを考慮し、政府は、新型コロナの感染症法上の位置付けについて、本年5月8日に、現在の「2類相当」から「5類」に移行する方針を決定しました。これを契機に、これまで大きな制限を受けてきた社会経済活動や教育活動などが、ポストコロナに向けて、大きく動き出すものと期待されるところであります。引き続き感染防止対策に努めつつも、この流れに乗り遅れることなく、国・県などの支援を受けながら、地域経済の活性化や市民の皆様の生活支援などに、全力で取り組んでまいります。
基本方針
それでは、令和5年度の基本方針について申し上げます。
本年1月に総務省より公表されました「住民基本台帳人口移動報告2022年結果」によりますと、集計を開始した2014年以降、茨城県において初となった転入超過が、昨年に引き続き2年連続となった一方で、厚生労働省の人口動態統計における令和4年度の茨城県の年間出生数は、15年連続減少しており、過去最小となる見込みとなっております。本市におきましても、平成17年には301人であった年間出生数も、令和4年は161人と少子化に歯止めがかからず、極めて深刻な状況にあり、本市の人口減少・少子高齢化は、生産・消費活動の縮小による地域経済の活力低下、税収の減少、社会保障の増加による財政の逼迫、地域コミュニティの崩壊など、地域経済や市民の生活に様々な影響を及ぼすものと考えられます。
このような状況から、人口減少対策を市の最重要課題と捉えた総合計画基本計画「ひたちおおみや未来創造アクションプラン」を策定するとともに、計画期間の5年間において、施策体系の枠組みを超え、分野を横断して重点的・優先的に取り組む政策プロジェクトとして「人口流出を防ぐダムの構築と実践」をテーマに掲げ、その実現に向けた三つの戦略を令和4年度よりスタートさせたところであります。
目指すべき将来像の実現に向けた各種施策の推進にあたりましては、質の高いサービスの提供に努めながら、行財政改革にもしっかりと取り組み、将来を展望した戦略的な視点による効率的、効果的で持続可能な行政運営を目指していく考えであります。
以上が市政運営における、基本的な考え方となります。
令和5年度の政策展開
続きまして、令和5年度の政策展開について申し上げます。令和5年度におきましても、本市の最重要課題である「人口減少、少子化対策」に重きを置いた令和4年度の政策展開を継続するべく三つの政策の柱を基本とし、それらに位置付けた各種施策をスピード感を持って、積極的に推進してまいります。
まず、一つ目の柱の「若者・女性がすみやすく、子育てしやすいまちの実現」では、若者や女性、さらに子育て世帯が居住したくなる、ストレスフリーでお洒落なコンパクトシティの形成を目指すとともに、子育てにおける様々な課題の解決を図るための施策を展開してまいります。
特に、私の政策の一丁目一番地と位置付けております「常陸大宮駅周辺整備事業」では、令和7年度の供用開始に向けまして、駅舎・東西自由通路の工事に着手し、いよいよ目に見える形で事業が動き出すほか、同じく令和7年度の完成を目指し、中富町地内に戸建てタイプの「子育て世帯向け住宅」の整備を開始いたします。また、ショッピングセンターピサーロ内へ「子供広場」を整備し、雨天時にも子供たちが遊べるよう、子育て環境の充実と施設への誘客による地域経済の活性化を図ります。
さらに、県内で唯一の取り組みとして、これまでも体外受精及び顕微授精などの不妊治療を行った夫婦への保険適用外の自己負担分の全額助成や、不育症検査費用の助成を行ってきたところでありますが、これを令和5年度も継続し、出産を希望する夫婦の経済的負担の軽減を図ってまいります。
また、安心して出産、子育てができるよう、保健センターや昨年4月に設置した「こどもセンター」などが連携し、妊娠期から出産・子育てまで一貫した相談支援体制を充実するとともに、妊娠・出産時にそれぞれ5万円を給付することにより、出産・育児関連用品の購入費用などの負担軽減を図ります。
その他、住宅を建設或いは購入する新婚家庭や子育て世帯などを対象とした各種助成金を継続するほか、移住希望者等に向けたモニターツアーの実施やチャットシステムを活用した相談体制の構築など、関係人口の拡大や移住・定住を推進する施策にも併せて取り組み、「若者・女性がすみやすく、子育てしやすいまちの実現」に向けた各種施策を展開してまいります。
続いて、二つ目の柱である「学力向上にコミットする教育の推進」でありますが、高い学力は、子供たちの将来における選択肢を大きく広げます。令和5年度も引き続き、教育の質の向上を図る取組みを推進するとともに、児童生徒の学習意欲を伸ばす機会を提供し、学力向上を重視した施策を展開してまいります。
まず、昨年度導入いたしました標準学力検査のNRT(集団基準準拠テスト)に加え、令和5年度は新たにCRT(目標基準準拠テスト)を導入し、1年間における基礎的、基本的な学習内容の到達度を客観的に把握するとともに、教科間の差や経年による学力の伸びを確認しつつ、これまでGIGAスクール構想の推進により整備されたタブレット型パソコンや学習支援ソフトの更なる活用を図り、個々に応じた効果的な学習指導などと併せて「確かな学力」育成プロジェクトの充実・強化に取組んでまいります。
また、小学校高学年における外国語教育が必須となったことに伴い、小学校での英語教育の強化に貢献できる中核教員を養成するため、包括連携協定を締結した茨城キリスト教大学と連携し、海外の大学で研修を積むことにより英語教員の英語力と指導力の向上を図るとともに、小学校での英語教育を推進するなど、多様な教育施策を展開することで学力向上を目指してまいります。
最後に三つ目の柱である「観光を軸とした地域振興」では、令和4年度から試験運用を開始した御前山ダムの湖面利用について、アクティビティのさらなる充実を図るとともに、農業や学習を組み合わせた体験事業などを実施し、魅力の向上に取り組んでまいります。
さらに、大宮運動公園市民球場では、間もなく完了するグラウンドの全面人工芝化に続き、令和5年度は、フルスクリーンタイプLEDスコアボードの設置とシステムの改修を行い、県内で2番目となるフルスクリーン付き人工芝の野球場を整備することで、スポーツに親しむ機会を創出するほか、野球に止まらず、グランドゴルフやフットサルなど、多面的な利用を図ってまいります。
また、開設後約30年を経過したパークアルカディアにおいて、本市の公共施設では初めてとなる民間提案制度の導入により、民間企業のアイデアや事業企画力を活かした、官民連携による施設のリニューアルをスタートさせるほか、市内の観光・レクリエーション施設や自然、食、文化財、伝統行事などの地域資源を有機的に結びつけることにより新たな魅力を創出するとともに、それを観光資源化し、誘客促進に繋げることで地域経済の活性化を図ってまいります。
これら重点政策である三つの柱は、私が就任以来、人口減少対策として力を注ぎ、実践すべき政策として掲げてきた取り組みであります。
令和5年度は、これら三つの柱に重点を置いた予算編成の内容となっておりますが、この他、本市の課題を的確に精査し、常陸大宮らしさを大事にしながら、市民生活の向上と誰もが安心して住み続けたいと思える常陸大宮市の実現に向け、しっかりと各施策の執行に取り組んでいきたいと考えております。
令和5年度施策概要
続きまして、その他令和5年度の主要施策の概要につきまして、総合計画の施策体系に沿って説明をさせていただきます。
第一は、「未来を拓き、自分らしく輝くひとを育むまち」であります。
将来に夢と希望を抱く常陸大宮市の子供たちの育成と、誰もが生涯にわたって生きがいと喜びのある生活が送れるよう、少子化対策や子育て・教育環境の充実、スポーツ・文化・芸術に親しむ環境づくりを進めるものであります。
まず、医療費福祉支給制度(マル福制度)になりますが、全ての子育て世代の経済的負担の軽減を図るため、小児と妊産婦の所得制限を撤廃いたします。また、こどもセンターでは、幼児期から児童期・思春期にわたる子育ての不安や悩みの相談をはじめ、発達の気になる子供に対しては、早期から必要に応じた切れ目のない支援を継続するほか、老朽化した山方放課後児童クラブの改築工事の実施など、子育てしやすい環境づくりを進めてまいります。
教育に関しましては、引き続き学校教育活動指導員を全小中学校に配置し、ティームティーチングによるきめ細かな学習指導に取り組みます。また、これまで各小学校単位で実施してきた宿泊学習を中1ギャップ解消のため、小学校6年生の学校間交流型として実施するほか、小学校5、6年生の希望者を対象に普段学校では学ぶことの出来ない自然とふれあう活動や、防災教育・チームビルディングなどの体験事業を実施し、総合的な学習の時間や道徳の発展的な学習により、子供達の将来の選択肢や可能性を広げていきます。さらには、小中学校等の校舎及び体育館の照明のLED化に向けた改修工事を行い、子供達の学習環境の改善にも取り組んでまいります。
スポーツ・文化・芸術への取組では、泉坂下遺跡保存事業を進めるなど、貴重な歴史文化遺産の適切な保護を図るとともに、これらを有効に活用した魅力あるまちづくりを進めてまいります。
第二は、「だれもが安心して暮らせるまち」であります。
市民一人ひとりが住み慣れた地域において、心身ともに健康で安心して生活を送ることができるよう、医療環境の整備や高齢者・障害者福祉などの充実を図るとともに、災害に対して迅速かつ的確に対応できる防災体制の強化を図り、市民の生命と財産を守ります。
まず、地域医療を担う人材確保修学資金貸付制度や市単独を含む地域医療学講座を活用し、引き続き医師の人材育成及び確保を図ります。また、二次救急医療を担う常陸大宮済生会病院への運営費及び医療機器等の更新時における補助を行うことで、本市を始め、県北西部地域の医療サービスの充実を図ってまいります。
次に、災害に強いまちづくりとして、災害対応特殊水槽付消防ポンプ自動車を整備するほか、計画的に防火水槽を整備するとともに、自主防災組織活動の育成や支援に引き続き取り組むなど、防災基盤の強化を図ってまいります。
第三は、「自然と調和した快適で安全なまち」であります。
人口減少に対応できるまちの拠点整備を進めるとともに、常陸大宮ならではの住みやすさや魅力を活かした、移住、定住の推進に取り組みます。
コロナ禍の長期化に伴い、企業も個人も多くの行動制約が求められる中で、「新しい生活様式」を模索し、「テレワーク」や「住環境・暮らしを優先した居住環境の選択」などの新しいツールや考え方が、より多くの人に認知されるようになり、一気に現実味のある選択肢となりました。移住に関心のある方への移住体験事業の継続、空き家バンクの充実を図るとともに、WEBサイトをはじめ、多様な媒体を活用し、本市の魅力について発信を行うことで、積極的に移住、定住を推進してまいります。
さらに、公共交通の維持、確保につきましては、本市の地域公共交通の基軸となる予約制乗合タクシーの運行を支援するとともに、AIシステムによる新技術を導入し、24時間の予約受付や最適ルートの算出、或いは配車を行うなど、更なる利便性向上を図るほか、地域公共交通の利用者ニーズの把握に努めながら、市民の生活交通の環境整備や利用促進を引き続き行ってまいります。
また、消費者行政につきましては、国や県、関係機関と協力して、相談体制の一層の充実を図り、市民の安全、安心な消費生活を実現するため、今後も継続的に取り組んでまいります。
第四は、「みんなでつくる協働のまち」であります。
将来にわたってまちを持続し発展させるため、効率的、効果的な行政運営を行いながら、地域課題の解決に当たっては、市民や企業、行政が手を取り合って一丸となり、協働によるまちづくりを推進するとともに、地域コミュニティの充実や市民活動の活発化を図り、市民自らの意思による地域づくりを推進してまいります。
具体的には、市民団体等との協働によって、行政や地域課題の解決を目指す「協働事業提案制度補助金」の拡充とあわせ、「まちづくり活動支援補助金」を新設し、市民が主体となって実施する公益性が高く、地域の活性化を推進する活動を助成するほか、友好都市などとの多面的な交流を行うことにより、交流人口や関係人口の拡大を図り、地域の活性化につなげてまいります。
また、証明書発行手数料を中心にキャッシュレス決済を拡充するほか、電子申請や施設利用等の申込予約を一元管理するシステムを導入するなど、市民サービスの向上とあわせて、事務処理の効率化を図ってまいります。
第五は、「魅力ある資源を生かした活力と誇りあふれるまち」であります。
地域経済を発展させるためには、地域に新たな雇用を生み出す必要があり、そのためには、常陸大宮市の魅力ある地域資源を最大限に活用することが肝要であります。
まず、本市のイメージアップにつながる魅力ある特産品や土産品の開発など、観光産業と連携した窓口となる「地域商社」の設立に向けた準備に着手いたします。
商業の振興につきましては、新たに駅周辺の空き店舗等を活用し創業する出店者へ補助金を給付し、駅周辺の活性化を図ってまいります。
次に、農業の振興につきましては、まず「有機農業」の推進を図るため、各種補助事業や有機米栽培に係る技術支援を充実するほか、試験導入として学校給食へ地元産の有機野菜などを昨年度に続き提供いたします。さらに、本市農産物等の、市場や小売店、各種イベント等における認知度向上に向けたPR活動、農業用機械設備の整備への支援など、農業の担い手及び団体等の育成・確保に加え、農業所得の向上を図るため6次産業化等への農産物の加工を推進します。また、農作物等に多大な被害を出しております有害鳥獣への対策についても引き続き行ってまいります。
最後に、林業振興では、市産材の利用を促進するための「木造住宅建設助成金」を引き続き実施するほか、森林環境譲与税を活用した、林業の人材育成や担い手の確保、森林整備を進めます。また、高性能林業機械改修整備費補助金や森林作業道整備事業費補助金を継続し、林業の振興を図ってまいります。
結び
以上、令和5年度の市政運営の基本方針と新年度における主要な施策の概要について、述べさせていただきました。
新総合計画がスタートして二年目を迎え、私が一貫して掲げる「人口流出を防ぐダム」の構築に向け、各種施策を積極的に、そして力強く推進していきたいと考えております。鳶目兎耳(えんもくとじ)のごとく、明るい未来を展望し、鳶(とび)の目のように遠く、先のことまで目ざとく捉え、兎の耳のようにどんな小さな声も聞き逃さず、さらには兎の跳躍のような躍動感とスピード感をもって対応する姿勢で市政運営に邁進していく所存でありますので、議員各位をはじめ、市民の皆様方のより一層の御理解と御協力を重ねてお願い申し上げ、施政方針といたします。
令和5年2月28日
常陸大宮市長 鈴木 定幸