こどもにとって、両親の離婚はとても大きなできごとです。こどもがそれを乗り越えて健やかに成長していけるよう、離婚をするときに親としてあらかじめ話し合っておくべきことに、「養育費」と「親子交流(面会交流)」があります。
父母の離婚後のこどもの養育に関するルールが改正されました(民法等改正)
令和6年(2024年)5月に民法等改正が成立し、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、こどもを養育する父母の責務を明確化するとともに、親権(単独親権、共同親権)、養育費、親子交流などに関するルールが見直され、令和8年(2026年)5月までに施行されます。
民法改正の主なポイント
親の責務に関するルールの明確化
こどもの未来を担う親としての責任として、親権や婚姻関係があるかどうかに関わらず、こどもを育てる責任と義務についてのルールが明確化されます。
こどもの人格の尊重
こどもが心も体も元気でいられるように育てる責任があります。こどもの利益のため、意見をよく聞き、人格を尊重しなければなりません。
こどもの扶養
こどもを養う責任があります。こどもが親と同じくらいの生活を送れる水準でなければなりません。
父母間の人格尊重・協力義務
こどものために、お互いの人格を尊重し協力しなければなりません。次のような行為は、この義務に違反する場合があります。
- 父母の一方から他方への暴力、脅迫、暴言、誹謗中傷等
- 別居親が、同居親によるこどもの世話に不当に干渉すること
- 父母の一方が、特段の理由なく他方に無断でこどもの住む場所を変えること
- 約束した親子交流を特段の理由なく拒むこと
こどもの利益のための親権行使
親権は、こどもの利益のために行使しなければなりません。
親権に関するルールの見直し
1人だけが親権を持つ単独親権のほかに、離婚後に父母2人ともが親権を持つ共同親権が選択できるようになります。単独親権か共同親権かは、父母が話し合って決めます。父母の話し合いで決まらない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が、父母とこどもとの関係や、父と母との関係などの様々な事情を考慮したうえで、こどもの利益の観点から、単独親権とするか共同親権とするか定めます。
親権の行使方法(父母双方が親権者である場合)
共同親権を選択した場合の親権の行使方法のルールが明確化されます。
父母が共同で決めなければならないこと
こどもの住む場所を変えることや将来の進路を決めること、心と体の健康に重大な影響を与える治療やお金の管理などについては、父母が話し合って決めます。なお、父母の意見が対立するときには、家庭裁判所で父母のどちらかが1人でその事項を決められるようにする裁判を受けることができます。
(注意)父母間の合意がない場合は、裁判所が関与します。
一方の親が決められること
食事や着る服を決めること、短期間の観光目的での旅行、心と体の健康に重大な影響を与えない治療の決定、予防接種や習い事、高校生の放課後のアルバイトの許可など日々の生活の中でこどもに重大な影響を与えないものは、父母のいずれか一方で決めることができます。
緊急の事情があるとき
暴力等や虐待から逃れるために引っ越すこと、病気やけがで緊急の治療が必要な場合など、父母の協議や家庭裁判所の手続きを経ていては間に合わず、こどもの利益を害するおそれがあるときは、父母のいずれか一方で決めることができます。
詳細については、下記ホームページやパンフレットをご覧ください。
法務省ホームページ 民法等の一部を改正する法律について
パンフレット(父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました)
養育費とは
養育費とは、こどもが経済的・社会的に自立するまでに要する衣食住に必要な経費や教育費、医療費などです。親の養育費支払義務は、親の生活に余力がなくても自分と同じ水準の生活を保障しなければならない強い義務(生活保持義務)があるとされています。養育費は、父母が離婚する前にきちんと話し合って取り決めておくことが大切です。離婚する際に取り決めることができなかった場合、こどもを監護養育している親は、離婚後、こどもが経済的・社会的に自立するまでは、こどもと離れて暮らしている親に対していつでも養育費を請求することができます。
民法改正の主なポイント
養育費の支払い確保に向けた見直し
こどもの生活を守るために、養育費を確実にしっかりと受け取れるように、新たなルールの創設やルールの見直しが行われました。
取り決めの実効性の向上
文書で養育費の取り決めをしていれば、支払いが滞った場合にその文書をもって、一方の親の財産を差し押さえるための申し立てができるようになります。
法定養育費
離婚時に養育費の取り決めがなくても、こどもと暮らす親が、こどもと暮らしていない親へ、一定額の法定養育費を請求できるようになります。また、法定養育費の支払がされないときは、差押えの手続きを申し立てることができます。
(注意)法定養育費は、あくまで養育費の取り決めをするまでの暫定的・補充的なもので、父母間で取り決めるべき養育費の標準額や下限額を定める趣旨のものではありません。こどもの健やかな成長を支えるためには、父母の協議や家庭裁判所の手続きにより、適正な額の養育費の取決めをしていくことが重要です。
裁判手続きの利便性向上
養育費に関する裁判手続きでは、各自の収入を基礎として、養育費の額を算定することとなります。家庭裁判所は、養育費に関する裁判手続きをスムーズに進めるために、収入情報の開示を命じることができるようになります。また、養育費を請求する民事執行の手続きでは、地方裁判所に対する1回の申立てで財産の開示、給与情報の提供、判明した給与の差し押さえに関する手続きを行うことができるようになります。
養育費については下記ホームページをご確認ください。
親子交流(面会交流)とは
親子交流(面会交流)とは、こどもと離れて暮らしているお父さんやお母さんがこどもと定期的または継続的に会って話をしたり一緒に遊んだりして交流することです。たとえ両親が離婚しても、こどもはお父さんとお母さんのどちらからも愛されていると実感できることによって深い安心感と自尊心を育むことができます。なお、離婚(別居)前に家庭内で暴力があった場合などで、相手方からDV被害を受ける恐れがあるなど、親子交流をすることがこどもの最善の利益に反する場合にまで親子交流を行う必要はありません。
民法改正の主なポイント
安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
こどものことを最優先に、親子交流や父母以外の親族との交流に関するルールが見直しが行われました。
親子交流の試行的実施
家庭裁判所の手続き中に親子交流を試行的に行うことができます。家庭裁判所は、こどものためを最優先に考え、実施が適切かどうかや調査が必要かなどを検討し実施をうながします。
婚姻中別居の親子交流
父母が婚姻中にこどもと別居している場合の親子交流は、こどものことを最優先に考えることを前提に、父母の協議で決め、決まらない時は家庭裁判所の審判等で決めることがルールとなります。
父母以外の親族とこどもの交流
祖父母など、こどもとの間に親子関係のような親しい関係があり、こどものために必要があるといった場合、家庭裁判所は、こどもが父母以外の親族との交流を実施するよう定めることができるようになります。
親子交流については下記ホームページをご確認ください。
養育費の受け取りや親子交流(面会交流)に関して、困りごとがある場合は専門機関に相談してください。
法テラス(日本司法支援センター)
養育費・親子交流相談支援センター
こども家庭庁ホームページ「養育費・親子交流の相談を受けようとするひとり親の方へ」


