はじめに
令和7年第1回市議会定例会に提案いたします議案等の説明に先立ち、市政運営の基本方針と新年度における主要な施策の概要を申し上げます。
令和7年は戦後80年、そして、昭和100年に当たる節目の年であります。さらに阪神淡路大震災から30年を迎える年でもあり、この間、戦後復興と高度経済成長、平成バブルとその崩壊、阪神淡路大震災を機に災害大国日本を象徴するような東日本大震災や能登半島地震の発生、本市で言えば東日本豪雨災害など、まさに日本社会は激動と言ってよい時代であったと認識しております。
こうした中、昨年は本市にとって「市制施行20周年」という記念すべき年でもありました。伝統行事の祇園祭と北関東最大級のドローンショーとのコラボレーションにより、多くの来場者で賑わった「ひたち大宮夏祭り」をはじめとして、全早明野球戦常陸大宮大会など、各種記念事業の実施により20周年にふさわしい機運の醸成が図れたと感じております。
また、今現在本市では有機農業に力を注いでいるところでありますが、昨年11月には「全国オーガニック学校給食フォーラム」が本市で開催されました。全国津々浦々から参加された方々はもとより、本市で農業に携わっている方々におきましても、基調講演をはじめ現地視察など、大変有意義な時間を共有することができたと感じているところであります。今後も有機農業の先進地として、作付け面積の拡大を図り、オーガニック学校給食をはじめとする本市の取組を近隣自治体と共有するとともに、全国に向けて発信してまいります。
基本方針
それでは、令和7年度の基本方針について申し上げます。
本年1月に総務省より公表されました「住民基本台帳人口移動報告2024年の結果」によりますと、茨城県の転出超過は6,040人で2023年の3倍強となっており、市区町村の結果は先になりますが、本市におきましても転出超過が顕著な状況になるものと見込まれます。
また、厚生労働省の人口動態統計における令和6年の茨城県の年間出生数は17年連続の減少で、過去最少となりました。本市におきましても今から10年前の平成26年の出生数が239人であったところ、令和5年に132人、令和6年は121人と過去最少を記録し、出生数は急減の一途を辿っているなど、状況は極めて深刻であると言えます。加速化する人口減少・少子化の流れは、地域経済をはじめ、市民生活の質や水準、さらには一人ひとりの豊かさが低下するような事態を招きかねず、非常に強い危機感を抱いているところであります。
このような状況の中、人口減少対策を最重要課題と捉えた本市の総合計画基本計画「ひたちおおみや未来創造アクションプラン」におきましては、政策プロジェクトとして「人口流出を防ぐダムの構築と実践」をテーマに掲げ、これまで子育て世帯を含む比較的若い年代をターゲットとした施策を展開してまいりました。大型ハード事業が目白押しとなる今後は、財政の逼迫が予測されますが、「選択と集中」、「優先順位を明確にした平準化」を行いながら、持続可能な行財政運営を心がけつつ、今後もスピード感をもって、結果にコミットメントできる市政運営に邁進していく考えであります。
令和7年度の政策展開
続きまして、令和7年度の政策展開について申し上げます。令和7年度におきましては、高齢者の健康寿命の延伸を目指す取組を進めることも人口減少の抑制につながるとの認識から、これまで推進してきました政策の三つの柱に、「高齢者の活躍、生きがいづくりの推進」を新たに加え、人口の流出を防ぐ取組と併せて、四つの政策の柱のもと各施策を展開してまいります。
一つ目の柱の「若者・女性がすみやすく、子育てしやすいまちの実現」では、これまでに引き続き、若者や女性、さらに子育て世帯が居住したくなる、快適でお洒落なコンパクトシティの形成を目指すとともに、子育てにおける様々な課題の解決を図るための施策を展開していきます。
まず、「常陸大宮駅周辺整備事業」におきましては、駅舎が本年2月1日から供用開始されたところでありますが、さらに東西自由通路の工事に着手し、令和7年度内の供用開始を目指してまいります。
また、駅西エリアの新たな憩いの場であり、ランドマークとなる駅西交流拠点につきましても、令和8年度の完成を目指し工事を進めており、今後はこの常陸大宮駅を中心としたエリアに人々が集い、賑わいが生まれ、ひいては街の活力を生み出すことができるよう、ソフト事業にも力を傾注してまいります。
次に、本市への移住定住を目的とした「子育て世帯向け住宅整備事業」でありますが、令和8年3月の入居開始に向けて、いよいよ建設工事に着手いたします。さらに新規事業として、卒業や結婚などのライフイベントの節目となるタイミングである20代が、慣れ親しんだ地元へのUターンを選択する後押しとなるよう、転居費用等を支援する「U(アンダー)29Uターン就職奨励金」を創出し、新たな助成を行ってまいります。
そして、これまでも県内で唯一の取組として、体外受精及び顕微授精などの不妊治療を行った夫婦への保険適用外の自己負担分の全額助成や、不育症検査費用の助成を行ってまいりましたが、令和7年度もこれを継続するとともに、言語の理解能力や社会性が高まり発達障害等が認知される時期である5歳児を対象とした健康診査を新たに取り入れることで、子供の特性を早期に把握し適切な支援を行ってまいります。さらに、養育環境に課題を抱え、学校や家庭に居場所のない児童等を対象に、虐待を防止し子供の最善の利益の保障と健全育成を図ることを目的として、新たに児童育成支援拠点を整備してまいります。
今後とも、健康推進課、こどもセンター及び教育委員会がしっかりと連携を強化し、妊娠期から出産・子育てまで一貫した切れ目のない支援体制の充実を図ってまいります。
次に、新たに二つ目の柱となる「高齢者の活躍、生きがいづくりの推進」では、高齢化率の高い本市において、高齢者がいつまでも健やかで心豊かに暮らしていけるよう、高齢者の健康寿命を意識した施策を推進していきます。
まず、高齢者等が気軽に外出できるよう予約制乗合タクシー「のるーと」の車両の増車と併せて運行時間帯を見直すほか、交通空白となっている休日や祝日において、一般ドライバーによる自家用有償旅客運送として公共ライドシェア実証運行を行い、市民等が利用しやすい持続可能な公共交通サービスの環境を整備してまいります。
また、茨城県公式健康推進アプリを活用し、既存資源であるヘルスロードの利用促進や日常的なウォーキングへの動機づけ、あるいは食に対する意識向上につなげるべく、獲得ポイントの目標達成への特典として、市の特産品の贈呈や健康レシピを紹介するなど、健康づくりインセンティブ事業にも取り組んでまいります。
続いて、三つ目の柱は「学力向上にコミットする教育の推進」であります。
私は、かねてから高い学力は、子供たちの将来における選択肢を大きく広げるものであると考えており、これまで教育の質の向上を図る取組や、児童生徒の学習意欲を伸ばす機会を提供してきたほか、標準学力検査を導入するなど、学力向上を重視した施策を展開してきました。令和7年度も、引き続き、子供達の学習内容の到達度の客観的な把握に努め、児童生徒の個々の習熟度に応じた学習活動を推進していきます。
まず、学校生活や学習環境の充実を図るため、昨年度に続き複式学級となる小学校において、市採用の学習活動支援教職員を配置し、主要教科を学年別で授業を行う環境とすることで、きめ細やかな学習活動につなげるほか、担任教職員の負担軽減を図ってまいります。
また、授業診断ツールを活用し、発話の比率や挙手人数あるいは教職員の机間指導の動線などをデータ化し、可視化することで効果的に指導内容の改善に取り組むほか、若手教職員へ指導技術を継承するなど、指導力の向上につなげてまいります。
そして、導入して3年目となる標準学力検査のNRT(集団基準準拠テスト)及びCRT(目標基準準拠テスト)にも引き続き取り組み、学習内容の到達度を客観的に把握するとともに、教科間の差や経年による学力の伸びを確認し、蓄積されたデータを活用しつつ、個々に応じた効果的な学習指導などと併せて「確かな学力育成プロジェクト」の充実・強化を継続してまいります。
また、国際的な感覚を身につけ、さらには、その視野を拡大するため、中学校3年生を対象とした海外研修を継続するほか、小学校での英語教育の強化に貢献する中核教員を養成するため、海外の大学に英語教員を派遣し、研修をとおして英語力と指導力の向上を図るとともに、小学校からの英語教育を推進するなど、多様な教育施策を展開することで学力向上を目指してまいります。
最後に四つ目の柱である「観光を軸とした地域振興」では、振興財団と観光協会を統合し、一般財団法人常陸大宮市観光物産協会を設立することで、観光地域づくりの司令塔とし、地域の稼ぐ力を向上させ、域外から人や資金を呼び込む事業を推進していきます。
まず、年間約60万人の集客があり、市の観光施設の核となっている「道の駅常陸大宮」の南部エリアにおきまして、起伏に富んだ3コースのグラウンドゴルフ場の実施設計に着手するとともに、平日の集客力の拡大につながる施設となるよう検討を進めてまいります。
また、施設整備から約30年が経過し、一部施設の老朽化が進んでいるやすらぎの里公園につきましては、令和8年度からの民間事業者による施設運営を前提として、総務省の地域力創造アドバイザー制度等を活用し、滞在コンテンツ等を磨き上げる構想の策定や運営改善策などを検討する「やすらぎの里公園ブラッシュアップ推進事業」に取り組んでまいります。
パークアルカディアにつきましては、民間提案制度の導入により、民間企業のアイデアや事業企画力を活かした施設のリニューアルを実施したところでありますが、さらにエリア内環境を活用し施設の充実を図ることで魅力向上につなげる「パークアルカディアブラッシュアップ推進事業」を展開してまいります。
さらに、御前山ダムの湖面を活用したアクティビティのさらなる充実を図るため、カヌー発着場の整備とあわせてカヌーやサップを購入するほか、大手アウトドアブランドメーカーとの連携により、一層の誘客促進に取り組んでまいります。
以上が、重点政策となる四つの柱に係る施策となりますが、私の政策の一丁目一番地であります常陸大宮駅周辺整備をはじめとする各種施策の成果が徐々に目に見える形になってきました。今後も手を緩めることなくスピード感と結果にこだわった市政運営に邁進し、生活の向上と魅力ある常陸大宮市の発展に向けて全力で取り組んでいく所存であります。
令和7年度施策概要
続きまして、その他令和7年度の主要施策の概要につきまして、総合計画の施策体系に沿って説明をさせていただきます。
はじめに「未来を拓き、自分らしく輝くひとを育むまち」であります。
将来に夢と希望を抱く常陸大宮市の子供たちの育成と、誰もが生涯にわたって生きがいと喜びのある生活が送れるよう、少子化対策や子育て支援・教育環境の充実、スポーツ・文化・芸術に親しむ環境づくりを進めるものであります。
まず、医療福祉費支給制度(マル福制度)におきまして、全ての子育て世代の経済的負担の軽減を図るため、令和5年10月から所得制限を撤廃するとともに、その対象範囲を全ての妊産婦と0歳から18歳までに拡大してきたところでありますが、令和7年度もそれら助成を継続いたします。
また、乳幼児の離乳食相談時や歯科検診時に有機農産物を配布し、野菜摂取によって体と心を育み食への関心を高める「有機野菜に親しむ食育推進事業」についても、継続して取り組んでまいります。
さらに、教育関係におきましては、中1ギャップ解消のため、各小学校単位で実施してきた宿泊学習を小学校6年生を対象に、学校間交流型として実施するほか、スポーツ・文化・芸術への取組では、泉坂下遺跡保存事業を進めるなど、貴重な歴史文化遺産の適切な保護を図るとともに、これらを有効に活用した魅力あるまちづくりを進めてまいります。
二つ目は「だれもが安心して暮らせるまち」であります。
市民一人ひとりが住み慣れた地域において、心身ともに健康で安心して生活を送ることができるよう、医療環境の整備や高齢者・障害者福祉などの充実を図るとともに、災害に対して迅速かつ的確に対応できる防災体制の強化を図り、市民の生命と財産を守っていきます。
政策展開で申し上げました各種施策に加え、医療分野におきましては地域医療を担う人材確保修学資金貸付制度や市単独の地域医療学寄附講座を進め、引き続き医療人材の育成及び確保を図っていくとともに、令和7年度から整形外科の常勤医が確保され、入院・手術が可能となる常陸大宮済生会病院への運営費及び医療機器等の更新時における補助を継続することで、本市を含めた、県北西部地域の医療サービスの充実を図ってまいります。
そして三つ目は「自然と調和した快適で安全なまち」であります。
人口減少に対応できるまちの拠点整備を進め、常陸大宮ならではの住みやすさや魅力を活かしたまちづくりを行うとともに、本市への移住に関心のある方に向けた移住体験事業の継続をはじめ、空き家バンクの充実、多様な媒体を活用した本市の魅力発信など、本市の魅力を充分に伝える移住、定住施策を推進いたします。
また、消費者行政につきましては、国や県、関係機関と協力して、相談体制の一層の充実を図り、市民の安全、安心な消費生活を実現するため、今後も継続的に取り組んでまいります。
四つ目は「みんなでつくる協働のまち」であります。
将来にわたってまちを持続発展させるため、効率的、効果的な行政運営を行いながら、地域課題の解決に当たっては、市民や企業、行政が手を取り合って一丸となり、協働によるまちづくりを推進するとともに、地域コミュニティの充実や市民活動の活発化を促し、市民自らの意思による地域づくりを推進していきます。
これまでも、市民団体等との協働によって行政や地域課題の解決を目指す「協働事業提案制度補助金」や「まちづくり活動支援補助金」を活用してきましたが、今後もこうした事業の継続により市民が主体となって実施する、公益性が高く、地域の活性化に資する活動をより積極的に支援してまいります。
最後五つ目は「魅力ある資源を生かした活力と誇りあふれるまち」であります。
地域経済の発展のため、本市の魅力ある地域資源を最大限に活用し、新たな「ものづくり」と「しごとづくり」の創出を図るとともに、本市のイメージアップにつながる魅力ある特産品や土産品の開発など、観光産業との連携を推進していきます。
商業の振興につきましては、金融機関及び商工会等と連携した起業希望者へのサポートを継続するほか、引き続き駅周辺の空き店舗等を活用し創業する出店者へ補助金を交付するなど、駅周辺の活性化を図ってまいります。
農業の振興につきましては、より安全で安心な農産物の生産と環境にやさしい農業、持続可能な農業の実現を目指ざし、有機農業の取組をさらに加速化させるべく各種補助事業や技術支援を継続するほか、引き続き学校給食へ地元産の有機野菜などを提供してまいります。
また、慣行有機を問わず農業の担い手確保に繋げるための人材育成機関として「常陸大宮市農業アカデミー」を創立し、農業の基本を学び自立できる環境づくりを推進してまいります。さらに、農業用機械設備の整備への支援や、農業所得の向上を図るため6次産業化等に向けた農産物の加工を推進するほか、農作物等に被害を及ぼしております有害鳥獣への対策などについても引き続き取り組んでまいります。
最後に林業振興ですが、公共建築物に積極的に市産材を活用していくほか、森林環境譲与税を活用した森林整備を進めるとともに、「高性能林業機械改修整備費補助金」や「森林作業道整備事業費補助金」、「木造住宅建設助成金」を継続し、本市の面積の6割を占める森林資源の利活用を図り、林業の振興に努めてまいります。
結び
以上、令和7年度の市政運営の基本方針と新年度における主要な施策の概要について、述べさせていただきました。
2025年は個人的に、世界が大きく変革しはじめる年であると感じており、またそうでなければならないとも感じております。世の中のパワーバランスが大きく変化する時代は、戦争、巨大災害、疫病、政治的リスクなど、あらゆる可能性を視野に入れ行動する必要があります。今後本市にいかなるリスクが降りかかろうとも、市民の生命、財産、経済を守るべく準備を怠らず、全力で取り組んでいく所存でありますので、議員各位をはじめ市民の皆様のより一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、令和7年度施政方針といたします。
令和7年2月26日
常陸大宮市長 鈴木 定幸