はじめに
令和8年第1回市議会定例会に提案いたします議案等の説明に先立ち、市政運営の基本方針と新年度における主要な施策の概要を申し上げます。
ここ最近における米国関税措置の影響や台湾有事を巡るリスクの高まりなど国際情勢が厳しさを増す中、70万人を割り込んだ出生数、急速な高齢化の進行、長引く物価高騰やAIに端を発する社会構造の変化など、地方自治体を取り巻く環境は激しい変化の真っ只中にあります。本市におきましても、人口減少を始め、地域コミュニティの維持、医療・福祉・子育て環境、産業振興と雇用の確保など、多くの課題に直面しているところであります。
そうした中、昨年は、久慈川沿いに広がる全国的にも貴重な真竹の竹林を使用した竹あかりアートイベント「ひたち大宮 DRAGON BANBOO」や、10月には6年ぶりの公演となります「西塩子の回り舞台」が開催され、多くの来場者を魅了するなど、本市の魅力向上に繋がる1年となりました。
一方で、重点施策であります「常陸大宮駅周辺整備事業」では、JR常陸大宮駅舎が昨年2月に供用開始され、その付属施設であります東西自由通路につきましても、今年3月の完成に向けて順調に工事が進捗しているところであります。また、中富町地内に建設中の「子育て世帯向け住宅整備事業」では、来月3月に第1期分8戸の入居が完了予定であり、第2期分の8戸につきましては、1月13日から入居募集を開始しておりますが、第1期を上回る応募が予想されているところであります。
さらに本年度からは、これまでの三つの政策の柱に「高齢者の活躍、生きがいづくりの推進」を新たに加え、移動手段の確保や外出機会を創出するべく、一般ドライバーによる公共ライドシェア実証運行を開始したところであります。
基本方針
それでははじめに、令和8年度の基本方針について申し上げます。
本年1月に総務省より公表されました「住民基本台帳人口移動報告2025年の結果」によりますと、茨城県の転出超過は5,960人でコロナ禍では一時転入超過に転じたものの、令和5年以降は再び転出超過が続いており、特に若い女性の転出が顕著となっております。
また、厚生労働省の人口動態統計における令和7年の茨城県の年間出生数は18年連続の減少で、過去最少となりました。本市におきましても今から10年前の平成27年の出生数が257人であったところ、令和元年に初めて200人を下回って以来、令和6年は121人、令和7年は122人と、出生数は減少の一途を辿っており、自然動態と社会動態を併せ、年間約700人の人口減が続いていることは極めて深刻な状況であると認識しているところであります。
予想を上回る速度で進行する人口減少・少子化の流れは、地域経済の縮小や労働力不足と産業の衰退、高齢化の進行と地域コミュニティの弱体化など、社会・経済・生活基盤といった多方面に影響を及ぼし、地域の持続可能性そのものが失われかねない複合的な課題であり、この課題解決のために残された時間は極めて少ないと推察しております。
このような状況の中、人口減少対策を最重要課題と捉えた本市の「ひたちおおみや未来創造アクションプラン」では、政策プロジェクトとして「人口流出を防ぐダムの構築と実践」をテーマに掲げ、各施策を展開してまいりました。現在、大型ハード事業を展開しているところでありますが、長期化する物価高騰の影響などから財政の逼迫が予測されており、事業の必要性や費用対便益を厳格に見極めるほか、積極的な民間活力の導入を検討するなど、持続可能な行財政運営と公共投資の適正化に努め、結果にコミットメントできる市政運営に邁進していく考えであります。
令和8年度の政策展開
続きまして、令和8年度の政策展開について申し上げます。令和8年度におきましては、人口の流出を防ぐ取組と併せて、令和7年度からの4つの政策の柱を継続し、各施策を展開してまいります。
一つ目の柱の「若者・女性がすみやすく、子育てしやすいまちの実現」では、これまでに引き続き、若者や女性、さらに子育て世帯が住みたくなる、快適でお洒落なコンパクトシティの形成を目指し、各施策を展開してまいります。
まず、「常陸大宮駅周辺整備事業」につきましては、来月の3月24日に東西自由通路の供用開始を予定しているほか、茨城県所管事業であります都市計画道路大宮停車場線につきましても、歩道の一部工事を残し、令和8年度の完成予定となっております。さらに令和10年度内の供用開始を目指し、東口の駅前広場整備工事に着手するとともに、関連する市道整備を進めることで、利便性の向上にとどまらず、地域の誇りと賑わいが循環し、駅東の街の活力再生につながる確かな一歩を踏み出してまいります。
次に、本市への移住定住を目的とした「子育て世帯向け住宅整備事業」では、本年3月に第1期の入居が開始され、さらに第2期分の8戸につきましても、1月13日から入居募集を開始するとともに、令和8年度には第2期整備工事に着手いたします。
さらに「移住・定住促進事業」では、就職などの機会を捉えて、20代の若者を本市へ呼び込む「U(アンダー)29Uターン就職支援金」を継続するほか、積極的な情報発信と併せて、個々の要望に合わせた移住体験を提供するなど、移住・定住の地を検討している方に本市を選んでいただけるよう、きめ細やかなアプローチに努めてまいります。
そのほか、「住まい」に関する支援として、住宅を購入する子育て世帯などへの助成を継続するとともに、空き家につきましては、改修工事に加え、新たに家財処分に対する助成を行い、有効活用を促進していきます。さらに「元気ひたちおおみや結婚応援事業」では、引っ越し費用への助成の追加など、サポート体制を強化しており、これら移住・定住促進のための施策を相乗的に展開してまいります。
また、出産を希望し、不妊治療を受ける夫婦の経済的負担の軽減を図るため、これまでも県内唯一の取組として、体外受精及び顕微授精などの不妊治療における費用の自己負担分の全額助成や、不育症検査費用の助成を行ってきました。令和8年度は、それら助成の継続に加え、医療機関の選択肢を広め、安心して治療に専念できるように、不妊治療を実施する医療機関までの交通費の助成を行います。
次に、二つ目の柱となる「高齢者の活躍、生きがいづくりの推進」では、高齢化率の高い本市において、高齢者がいつまでも健やかで心豊かに暮らしていけるよう、高齢者の健康寿命を意識した施策を推進してまいります。
まず、年間約60万人の集客があり、市の観光施設の核となっている「道の駅常陸大宮」の南部エリアにおきまして、起伏に富んだ4コースのグラウンドゴルフ場の整備工事に着手し、高齢者の健康寿命延伸と道の駅における平日の集客力の拡大につながる施設整備を進めていきます。
また、交通空白となっている休日に、高齢者を始め市民が気軽に外出できるよう昨年10月にスタートさせました、一般ドライバーによる「公共ライドシェア」実証運行事業を継続し、AIデマンドをはじめとするこれまでの公共交通政策と併せ、市民等が利用しやすい持続可能な公共交通サービスの環境を模索していきます。
さらに、日常的なウォーキングへの動機づけにつながるウォーキング教室を開催するほか、既存ヘルスロードに加え、御前山ダム眺望コースなど新たに3コースが指定された「いばらきヘルスロード」の利用促進とあわせて、茨城県公式健康推進アプリを活用し、獲得ポイントの目標達成への特典として、市の特産品等のインセンティブを設けるなど、ヘルスロード推進事業と健康づくりインセンティブ事業を組み合わせ、健康づくりへの相乗効果を高めてまいります。
続いて、三つ目の柱は「学力向上にコミットする教育の推進」であります。
私は、かねてから高い学力は、子供たちの将来における選択肢を大きく広げるものであると考えており、これまで教育の質の向上を図る取組や、児童生徒の学習意欲を伸ばす機会の提供を行ってきたほか、標準学力検査を導入するなど、学力向上を重視した施策を展開してきました。令和8年度も、引き続き、子供達の学習内容の到達度の客観的な把握に努め、児童生徒の個々の習熟度に応じた学習活動を推進してまいります。
具体的には、導入して4年目となる標準学力検査のNRT(集団基準準拠テスト)及びCRT(目標基準準拠テスト)に引き続き取り組み、学習内容の到達度を客観的に把握するとともに、教科間の差や経年による学力の伸びを確認し、蓄積されたデータを活用しつつ、個々に応じた効果的な学習指導などと併せて「確かな学力育成プロジェクト」の充実・強化を継続していきます。
さらに、複式学級が増加している小学校におきましては、引き続き市採用の学習活動支援教職員を配置し、学校生活や学習環境の充実を図るとともに、主要教科を学年別で授業を行う環境とすることで、きめ細やかな学習活動につなげていくほか、担任教職員の負担軽減を図ってまいります。
最後に、四つ目の柱である「観光を軸とした地域振興」では、民間提案制度の導入により、民間ならではのアイデアや事業企画力を活かした、事業者によるパークアルカディアの施設リニューアルが実施されてきました。そうしたことから市では、エリア内の自然環境等を活かした施設の更なる充実を図るため「パークアルカディアブラッシュアップ推進事業」の実施により、所管施設のリノベーション工事に着手します。
また、施設整備から約30年が経過し、一部施設の老朽化が進んでいるやすらぎの里公園につきましては、民間事業者による施設運営を前提として、滞在コンテンツ等の磨き上げを検討する「やすらぎの里公園ブラッシュアップ推進事業」を継続するほか、美和花立自然公園におきましては、県内初となります民間事業者によるコンセッション方式での運営が開始されることとなります。民間事業者が有するノウハウや資金を活用することで、施設の魅力向上と市の財政負担の軽減を図ってまいります。
以上が、重点政策となる四つの柱に係る施策となりますが、私の政策の一丁目一番地であります常陸大宮駅周辺整備をはじめとする各種施策の成果が徐々に目に見える形になってまいりました。今後も手を緩めることなく、限られた財源の中で最大の効果が発揮できるよう、市民生活の安定と本市の将来に責任を持つ立場として、市政運営に邁進し魅力ある常陸大宮市の発展に向けて全力で取り組んでいく決意であります。
令和8年度施策概要
続きまして、その他令和8年度の主要施策の概要につきまして、総合計画の施策体系に沿ってご説明いたします。
はじめに、「未来を拓き、自分らしく輝くひとを育むまち」であります。
将来に夢と希望を抱く常陸大宮市の子供たちの育成と、誰もが生涯にわたって生きがいと喜びのある生活が送れるよう、少子化対策や子育て支援・教育環境の充実、スポーツ・文化・芸術に親しむ環境づくりを進めるものであります。
まず、医療福祉費支給制度(マル福制度)におきまして、全ての子育て世代の経済的負担の軽減を図るため、令和5年10月から所得制限を撤廃するとともに、その対象範囲を全ての妊産婦と0歳から18歳までに拡大してきたところであり、令和8年度もこの助成を継続いたします。
また、乳幼児の離乳食相談時や2歳児歯科検診時に有機農産物を配布し、野菜摂取によって体と心を育み食への関心を高める「有機野菜に親しむ食育推進事業」につきましても、継続して取り組んでいきます。
さらに、教育関係におきましては、国際的な感覚を身に付け、その視野を拡大するため、中学校3年生を対象とした海外研修を継続するほか、小学校での英語教育の強化に貢献する中核教員を海外の大学に派遣し、研修をとおして英語力と指導力の向上を図り、小学校からの英語教育を強化するなど、多様な教育施策を展開することで総合的な学力向上を目指してまいります。
二つ目は「だれもが安心して暮らせるまち」であります。
市民一人ひとりが住み慣れた地域において、心身ともに健康で安心して生活を送ることができるよう、医療環境の整備や高齢者・障害者福祉などの充実を図るとともに、災害に対して迅速かつ的確に対応できる防災体制の強化など、市民の生命と財産を守ってまいります。
政策展開で申し上げました各種施策に加え、医療分野では、これまでも修学資金貸与制度や市単独の地域医療学寄附講座の開設により医師確保に取り組んできました。昨年は新たに常陸大宮済生会病院に東京科学大学より2名の整形外科医を派遣いただいたところであり、こうした体制を令和8年度以降も継続・進化させていくことで、市民の皆様の安心安全をより強固なものにしていきたいと考えているところであります。
また併せて、常陸大宮済生会病院への運営費等の補助を継続することで、本市を含めた県北西部地域の医療サービスの更なる充実を図ってまいります。
そして三つ目は「自然と調和した快適で安全なまち」であります。
人口減少に対応できるまちの拠点整備を進め、常陸大宮ならではの住みやすさや魅力を活かしたまちづくりを行うとともに、本市への移住に関心のある方各々のニーズに対応した相談、移住体験事業の継続や、空き家バンクの充実、多様な媒体を活用した本市の魅力発信など、本市の魅力を充分に伝える移住、定住施策を推進してまいります。
四つ目は「みんなでつくる協働のまち」であります。
将来にわたってまちを持続発展させるため、効率的、効果的な行政運営を行いながら、地域課題の解決に当たっては、市民や企業、行政が手を取り合い一丸となって、協働によるまちづくりを推進するとともに、地域コミュニティの充実や市民活動の活発化を促し、市民自らの意思による地域づくりを推進してまいります。
まず、各証明書につきましては、市役所窓口及びコンビニエンスストア等に設置されたキオスク端末で取得できる環境にありますが、庁内に新たにキオスク端末を設置し、手続きの簡略化や利便性のさらなる向上と併せて、事務処理の効率化を図っていきます。
またこれまでも、行政や地域課題の解決を目指すために市民や市民団体等が主体となった「協働事業提案制度補助金」や「まちづくり活動支援補助金」等を活用した事業を行ってきましたが、今後も公益性が高く、地域の活性化に資する市民参加型の協働活動をより積極的に支援してまいります。
最後に、五つ目は「魅力ある資源を生かした活力と誇りあふれるまち」であります。
地域経済の発展のため、本市の魅力ある地域資源を最大限に活用し、新たな「ものづくり」と「しごとづくり」の創出を図るとともに、本市のイメージアップにつながる魅力ある特産品や土産品の開発など、観光物産協会や観光産業との連携を推進してまいります。
はじめに商業の振興についてですが、金融機関及び商工会等と連携した起業希望者へのサポートを継続するほか、国の財源を活用したプレミアム商品券の発行など、市内の需要喚起策を継続的に行っていきます。再開発中の常陸大宮駅周辺につきましては、引き続き駅周辺の空き地・空き店舗等を活用し創業する出店者へ補助金を交付するとともに、事業者の誘致を活発化させるなど、一層の活性化を図ってまいります。
農業の振興につきましては、老朽化した育苗施設や乾燥調整施設といった共同利用施設などの整備、更新、機能強化に要する費用の助成、さらには担い手農家の農業用機械設備への支援のほか、農作物等に被害を及ぼしております有害鳥獣への対策などについても引き続き取り組んでいきます。
また、より安全で安心な農産物の生産と環境にやさしい農業、持続可能な農業の実現を目指し、有機農業の取組をさらに加速化させるべく各種補助事業や技術支援を継続するほか、公共調達としての学校給食向けに地元産の有機野菜などを提供してまいります。
最後に、林業振興ですが、公共建築物に積極的に市産材を活用していくほか、森林環境譲与税を活用した森林整備を進めるとともに、「高性能林業機械改修整備費補助金」では新たに導入する機械への補助制度を設けるとともに、これまでの改修に係る補助金の上限額を引き上げ拡充するほか、「森林作業道整備事業費補助金」、「木造住宅建設助成金」を継続し、本市の面積の約6割を占める森林資源の利活用を図り、林業の振興に努めてまいります。
結び
以上、令和8年度の市政運営の基本方針と新年度における主要な施策の概要について、述べさせていただきました。
今年の干支は「午(うま)」であります。
馬は古くから人と共に歩み、力強く前へ進む存在として親しまれてきました。また、駆ける姿は「前進」「躍動」「行動力」の象徴でもあります。
地方地自治体を取り巻く環境は、物価の高騰や人口構造の変化、頻発化・激甚化する災害への備えなど、種々課題を抱えておりますが、こうした不透明な時代だからこそ、立ち止まることなく、確かな一歩を踏み出していく姿勢が求められます。馬と人が息を合わせて力を発揮するように、本市においても市民の皆様の声にしっかりと耳を傾け、地域の方々を始め関係機関などと力を合わせながら、安心安全な暮らし、子育てしやすい環境、活力溢れる地域経済の実現に向けて、先頭に立って走り続ける所存でありますので、議員各位をはじめ市民の皆様のより一層の御理解と御協力をお願い申し上げ、令和8年度施政方針といたします。
令和8年2月25日
常陸大宮市長 鈴木 定幸